仕入れ・小売向け

仕入れの消費税はどうなるか — 仕入税額控除とインボイス、免税事業者からの仕入れの経過措置

読了目安 約15分
机の上に広げたレシートと書類を、電卓を使って確認している場面

写真: Kaboompics(Pexels)

仕入れにかかった消費税は、売上げのときに預かった消費税額から差し引く「仕入税額控除」の対象になります。控除を受けるには、一定の事項を記載した帳簿と、仕入れ先が発行した適格請求書(インボイス)の両方を保存することが要件です。インボイスを発行できない仕入れ先から仕入れた場合は、仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があり、その割合は2026年10月1日の仕入れから80%が70%に変わります。個別の適用可否や自社がどの制度にあてはまるかは、税理士または所轄の税務署にご確認ください。

商品を仕入れて店舗や自社の EC で販売していると、仕入れ代金と一緒に消費税を支払います。この支払った消費税をどう扱うかで最終的に納める税額が変わり、仕入れ先がインボイスを発行できるかどうかによっても金額が変わります。仕入れ先を選ぶ段階から関係してくる論点です。

この記事では仕入れる側の実務にしぼって、控除の仕組み、要件となる帳簿と請求書、インボイスを発行できない仕入れ先からの経過措置、控除の対象にならない支払いを整理します。なお税率は標準税率10%(消費税7.8%・地方消費税2.2%)と軽減税率8%(消費税6.24%・地方消費税1.76%)の複数税率のため、飲食料品を扱う場合は税率ごとに区分して記帳します(出典: 国税庁No.6303 消費税及び地方消費税の税率)。

仕入れにかかった消費税は仕入税額控除で差し引く

消費税の納付額は、売上げのときに預かった消費税額から、仕入れなどのときに支払った消費税額を差し引いて計算します。この差し引きが仕入税額控除です。

国税庁は、その課税期間の課税売上高が5億円以下で、かつ課税売上割合が95%以上の場合、「課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除します」としています(出典: 国税庁No.6401 仕入控除税額の計算方法)。小売や EC で課税売上げが中心の事業者は多くの場合これにあたり、5億円超または課税売上割合95%未満の場合は個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。

税抜きの売上げが2,000万円、税抜きの仕入れが1,400万円で、いずれも標準税率10%の取引なら、預かった消費税200万円から支払った消費税140万円を差し引いた60万円を納めます。控除できなければ納付額は200万円です。「仕入税額控除ができないとどうなるか」は、この差額がそのまま手元から出ていくということです。

控除する時期にも決まりがあります。国税庁は「仕入税額の控除は、実際に仕入れなどをした課税期間において行います」と明記しています(出典: 国税庁No.6355 課税売上げと課税仕入れ)。売れ残って在庫になっていても仕入れた課税期間で控除するため、売上原価として計上するタイミングとは考え方が異なります。仕入れた商品をいくらで売るかは仕入れた商品の販売価格の決め方で扱っています。

仕入税額控除を受けるには帳簿と適格請求書の保存が必要です

仕入税額控除の適用を受けるには、「その事実を記載し、区分経理に対応した帳簿および事実を証する請求書等の両方を保存する必要」があります(出典: 国税庁No.6496 仕入税額控除をするための帳簿及び請求書等の保存)。どちらか一方ではなく、両方です。記載しなければならない事項は次のとおりです(出典: 国税庁No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項)。

帳簿の記載事項 適格請求書(インボイス)の記載事項
相手方の氏名または名称 適格請求書発行事業者の氏名または名称および登録番号
課税仕入れを行った年月日 課税資産の譲渡等を行った年月日
資産または役務の内容(軽減対象のものはその旨) 資産または役務の内容(軽減対象のものはその旨)
支払対価の額 税抜価額または税込価額を税率の異なるごとに区分して合計した金額および適用税率
消費税額等
交付を受ける事業者の氏名または名称

請求書側で決定的なのは「登録番号」です。仕入れ先が適格請求書発行事業者として登録していなければ、この番号を記載した請求書は発行されません。取引を始める前に登録の有無を確認しておくと、あとから帳簿を作り直さずに済みます。

保存期間はいずれも7年間です。帳簿はその閉鎖の日、請求書等はその受領した日が属する課税期間の末日の翌日から2か月を経過した日を起算日とします。ただし「6年目と7年目については、いずれか一方を保存すればよい」とされています(出典: No.6496)。

請求書等がなくても帳簿の保存だけで控除できる場合

請求書の交付を受けにくい取引には例外があります。公共交通機関特例や自動販売機特例のほか、実務で影響が大きいのが少額特例です。基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が、令和5年10月1日(2023年10月1日)から令和11年9月30日(2029年9月30日)までに行う税込1万円未満の課税仕入れは、帳簿のみの保存で控除が認められます(出典: No.6496、国税庁「インボイス制度の理解のために」)。1万円未満かどうかは1商品ごとではなく、一回の取引の課税仕入れに係る金額(税込み)で判定します。少額特例では帳簿に「特例の対象となる旨」を記載する必要はありません。

インボイスを発行できない仕入れ先から仕入れた場合は経過措置で一部を控除できます

免税事業者や消費者、登録を受けていない課税事業者(以下、免税事業者等)からの課税仕入れは、適格請求書の交付を受けられないため原則として仕入税額控除ができません。ただし一定期間は、仕入税額相当額の一定割合を仕入税額とみなして控除できる経過措置があります。割合は段階的に下がり、令和8年度税制改正で適用期限が2年間延長されたうえで見直されました(出典: 国税庁インボイスQ&A 問113「免税事業者等からの仕入れに係る経過措置」、国税庁「令和8年度税制改正特集」)。

課税仕入れを行った時期 控除できる割合
令和5年10月1日〜令和8年9月30日(2023年10月1日〜2026年9月30日) 仕入税額相当額の80%
令和8年10月1日〜令和10年9月30日(2026年10月1日〜2028年9月30日) 仕入税額相当額の70%
令和10年10月1日〜令和12年9月30日(2028年10月1日〜2030年9月30日) 仕入税額相当額の50%
令和12年10月1日〜令和13年9月30日(2030年10月1日〜2031年9月30日) 仕入税額相当額の30%
令和13年10月1日以降(2031年10月1日以降) 経過措置なし(控除できません)

区切りは仕入れを行った日で判断し、2026年9月30日までは80%、2026年10月1日以降は70%です。改正前は2026年10月から3年間50%とされていたため、以前に調べた情報が手元にある場合はご注意ください。

なお、一の免税事業者等から行うこの経過措置の対象となる課税仕入れの合計額(税込み)が、その年または事業年度で次の上限を超える場合、超えた部分に経過措置は適用できません。

課税期間 上限額(税込み)
令和6年10月1日から令和8年9月30日までの間に開始する課税期間 10億円
令和8年10月1日以後に開始する課税期間 1億円

経過措置を受けるための帳簿と請求書の記載

経過措置を適用するには、免税事業者等から受領する区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と、経過措置の適用を受ける課税仕入れである旨を記載した帳簿の保存が必要です。国税庁は帳簿の記載例として「80%控除対象」「免」のほか、対象取引に「※」などの記号を付けて別途「※は80%控除対象」と表示する方法も認めています(出典: インボイスQ&A 問113)。記載する割合は、その仕入れに適用される割合に合わせます。国税庁の資料では「80%控除」および「7・5・3割控除」の適用を受ける課税仕入れである旨、と示されています(出典: 国税庁「インボイス制度の理解のために」)。請求書等は、受け取ったものに「軽減対象資産の譲渡等である旨」や「税率ごとに合計した税込価額」の記載がない場合に限り、受け取った側が追記して保存できます。

仕入れ先が免税事業者かどうかは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であることなどで決まります(出典: 国税庁No.6501 納税義務の免除)。小規模な作り手や個人の事業者から直接仕入れる場合は、登録の有無を先に確認しておくと会計処理を分けやすくなります。個人事業主の仕入れ全般は個人事業主の卸仕入れにまとめています。

仕入税額控除の対象になるもの・ならないもの

「仕入れ」という語から商品の仕入れだけを連想しやすいのですが、課税仕入れの範囲はより広く、逆に支払っても対象にならないものがあります。

課税仕入れになるもの 課税仕入れにならないもの
商品などの棚卸資産の購入 給与等の支払
原材料等の購入 土地の譲渡および貸付け(借地権を含む)
機械・建物・車両・器具備品など事業用資産の購入または賃借 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
広告宣伝費、厚生費、接待交際費、通信費、水道光熱費などの支払 印紙の売渡し場所における印紙の譲渡、郵便切手類の譲渡
事務用品、消耗品、新聞図書などの購入 国等が行う一定の事務に係る役務の提供(登記、許可、検査などの行政手数料)
修繕費、外注費 預貯金の利子、保険料を対価とする役務の提供

出典は国税庁No.6451 仕入税額控除の対象となるものおよびNo.6201 非課税となる取引です。

区別がつきにくいのが人に払うお金です。給与等の支払は課税仕入れになりませんが、「加工賃や人材派遣料のように事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されます」(No.6451)。同じ作業でも従業員に頼むか外部に発注するかで扱いが変わります。

簡易課税制度を選んでいる場合はインボイスの保存が控除の要件になりません

基準期間における課税売上高が5,000万円以下の事業者は、原則として適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を所轄の税務署長に提出することで、簡易課税制度を選択できます。この制度では、実際に支払った消費税額ではなく、課税売上げに係る消費税額にみなし仕入率を掛けた金額を仕入れの消費税額とみなします(出典: 国税庁No.6505 簡易課税制度)。

事業区分 業種 みなし仕入率
第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業、飲食料品の譲渡に係る農業・林業・漁業 80%
第3種事業 製造業、建設業、鉱業など 70%
第4種事業 上記および第5種・第6種以外の事業 60%
第5種事業 運輸通信業、金融業および保険業、サービス業(飲食店業を除く) 50%
第6種事業 不動産業 40%

第1種の卸売業は仕入れた商品をそのまま事業者に販売する事業、第2種の小売業は消費者に販売する事業を指します。上代・下代といった卸取引の用語は上代・下代とはで整理しています。

書類の扱いも変わります。国税庁は「簡易課税制度を選択している又は2割特例・3割特例を選択する場合、課税売上高から課税仕入れ等に係る消費税額や納付する消費税額を計算することから、仕入税額控除の要件としては、適格請求書などの請求書等の保存は求められません」としています(出典: 国税庁「インボイス制度の理解のために」)。簡易課税を選んでいれば、仕入れ先がインボイスを発行できるかどうかは納税額に影響しません。ただし所得税・法人税の計算では帳簿書類の保存が別途必要です。

簡易課税は選択したら原則として2年間は継続適用する必要があり、実額で計算する場合とどちらになるかは事業の内容で変わります。選択の判断は税理士にご相談ください。なお2割特例・3割特例は、免税事業者が登録を受けて課税事業者になった場合の納付税額の特例で、インボイスを発行する側の制度です。

仕入れの消費税でよくある誤解と確認すべきこと

登録番号のない請求書は、そのままでは適格請求書になりません。 仕入れ先が課税事業者であっても、登録を受けていなければ番号は記載されません。取引開始時に確認しておく項目です。

免税事業者からの仕入れは「まったく控除できない」わけではありません。 経過措置により、2026年10月1日から2028年9月30日までの仕入れは70%を控除できます。ただし帳簿にその旨の記載が必要なため、会計処理の区分を先に決めておきます。

税込1万円未満でも、記録が不要になるわけではありません。 少額特例が不要にするのは請求書等の保存であり、帳簿の保存は必要です。対象は一定規模以下の事業者、2029年9月30日までの仕入れに限られます。

仕入れ先が増えるほど、確認と保存の手間は増えます。 仕入れ先ごとに登録番号の有無、請求書の書式、届く経路が異なると、課税期間末の突き合わせに時間がかかります。整理の考え方は仕入れ先の一元管理、仕入れ全体の流れは小売店・EC の仕入れ完全ガイドで扱っています。

ここまで一般的な制度の内容を整理しました。自社が課税事業者か免税事業者か、簡易課税を選ぶべきか、個々の取引に経過措置が適用されるかは事業の状況で変わります。実際の申告にあたっては、必ず税理士または所轄の税務署にご確認ください。

よくある質問

仕入税額控除とは何ですか。

売上げのときに預かった消費税額から、仕入れなどのときに支払った消費税額を差し引いて、差額を納める仕組みです。国税庁は「課税期間中の課税売上げに係る消費税額から、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除します」(課税売上高5億円以下かつ課税売上割合95%以上の場合)と示しています。控除を受けるには、帳簿と請求書等の両方を保存することが要件です。

仕入税額控除ができないとどうなりますか。

仕入れのときに支払った消費税額を差し引けないため、その分だけ納める消費税額が増えます。売上げの消費税額が200万円、仕入れの消費税額が140万円のとき、控除できれば納付は60万円ですが、まったく控除できなければ200万円になります。帳簿や請求書の保存が要件を満たしていない場合も控除が受けられないため、書類の保存状態は取引ごとに確認してください。

インボイスを発行できない仕入れ先から仕入れた場合はどうなりますか。

原則として仕入税額控除を受けられませんが、一定期間は仕入税額相当額の一定割合を控除できる経過措置があります。割合は2023年10月1日から2026年9月30日までの仕入れで80%、2026年10月1日から2028年9月30日までの仕入れで70%です。この経過措置を受けるには、区分記載請求書等と同様の事項が記載された請求書等の保存と、経過措置の適用を受ける仕入れである旨を記載した帳簿の保存が必要です。

請求書がない仕入れでも仕入税額控除はできますか。

原則は請求書等の保存が必要ですが、帳簿の保存だけで認められる場合があります。公共交通機関特例や自動販売機特例のほか、一定規模以下の事業者が2029年9月30日までに行う税込1万円未満の課税仕入れは、帳簿のみの保存で控除が認められます(少額特例)。少額特例の対象は、基準期間の課税売上高が1億円以下、または特定期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者です。

課税仕入れにならないものには何がありますか。

給与等の支払は課税仕入れになりません。ただし加工賃や人材派遣料のように、事業者が行う労働やサービスの提供の対価には消費税が課税されます。このほか、土地の譲渡・貸付け、商品券やプリペイドカードなどの物品切手等の譲渡、印紙の売渡し場所における印紙の譲渡、行政手数料などは非課税取引にあたるため、支払っても仕入税額控除の対象にはなりません。

簡易課税制度を選んでいる場合もインボイスの保存は必要ですか。

簡易課税制度を選択している場合、仕入税額控除の要件として適格請求書などの請求書等の保存は求められません。課税売上高にみなし仕入率を掛けて仕入れの消費税額を計算するためです。みなし仕入率は卸売業が90%、小売業が80%です。ただし法人税や所得税の計算では帳簿書類の保存が別途必要になるため、書類を廃棄してよいという意味ではありません。

仕入れた商品が売れ残った場合、消費税はいつ控除しますか。

仕入税額の控除は、実際に仕入れなどをした課税期間において行います。売れ残って在庫として残っていても、仕入れた課税期間の控除対象です。国税庁は「建物などの減価償却資産であっても、それらの資産を購入した課税期間において、その購入価額の全額に対する消費税の額が仕入税額控除の対象になります」と示しており、費用として計上した時期とは考え方が異なります。

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