仕入れ・小売向け

仕入れた商品の販売価格の決め方 — 原価率・粗利率・掛け率からの計算と値付けの手順

読了目安 約11分
店内のハンガーラックで、商品に付いた値札を手に取って確認している場面

写真: RDNE Stock project(Pexels)

販売価格の決め方は、原価・競合の価格・顧客にとっての価値の3つを見比べ、最後に自店の目標粗利率で決めます。計算式は「販売価格 = 原価 ÷ (1 − 目標粗利率)」の1本で、原価300円(税抜)の商品で粗利率50%を狙うなら販売価格は600円です。原価には仕入れ価格だけでなく、仕入れの送料や梱包の費用まで含めます。求めた金額を端数の形に整え、値引きの余地を残して確定するまでが値付けの手順です。

仕入れた商品を店舗や自社の EC で売るとき、最初に決めるのが販売価格です。安く付ければ売れやすくなりますが手元に残る金額は減り、高く付ければ利益は増えますが売れる数は落ちます。この綱引きを勘で決めていると、売れているのに資金が増えない状態になりがちです。

この記事では、仕入れた商品をいくらで売るかを決める手順を、計算式と計算例に沿って整理します。原価率・粗利率・掛け率の関係、原価に何を含めるか、目標の粗利率からの逆算、端数と値引きの余地の扱いまでを扱います。

なお、卸す側が卸価格をいくらにするかは、同じ商品を反対側から見た別の設計です。そちらは卸価格と掛け率の決め方にまとめています。

販売価格を決める3つの出発点 — 原価・競合・顧客にとっての価値

販売価格の決め方には、大きく3つの出発点があります。どれか1つだけで決めるのではなく、3つを見比べて範囲を絞り込むのが実務的です。

出発点 決め方 向いている場面
原価から決める 原価に目標の利益を上乗せして販売価格を求める 価格の自由度が高い商品、独自に仕入れた商品
競合の価格から決める 同じ商品や近い商品の売り場価格に合わせる 他店でも扱われている定番商品
顧客にとっての価値から決める 顧客が感じる価値に見合う価格を先に置く 選ばれる理由が価格以外にある商品

原価から決める方法は計算が明確で赤字になりにくい一方、原価だけを見ると売り場の相場から外れた価格になることがあります。競合の価格から決める方法は売れやすい価格に近づけられますが、仕入れ条件が競合と違う場合、同じ価格に合わせた時点で粗利が消えることがあります。顧客にとっての価値から決める方法は、品ぞろえや相談への対応など、価格以外の理由で選ばれている場合に成り立ちます。

実務では、原価から下限を出し、競合の価格で上限のあたりを付け、その範囲の中で顧客にとっての価値を踏まえて決めます。

原価率・粗利率・掛け率の関係と計算式

値付けで使う数字は次の5本です。名前は違っても、同じ取引を別の角度から見た数字です。

数字 計算式 何を表すか
粗利額 販売価格 − 原価 1点売れたときに残る金額
粗利率 (販売価格 − 原価)÷ 販売価格 × 100 販売価格のうち手元に残る割合
原価率 原価 ÷ 販売価格 × 100 販売価格のうち原価が占める割合
掛け率 仕入れ価格(下代)÷ 上代 × 100 上代に対して何%で仕入れたか
販売価格の逆算 原価 ÷ (1 − 目標粗利率) 目標の粗利率から販売価格を求める

粗利率と原価率は、足すと100%になります。粗利率40%なら原価率は60%です。

掛け率がここに関わるのは、上代どおりに販売した場合です。上代1,000円の商品を6掛け(600円)で仕入れて1,000円で売れば、原価率は60%、粗利率は40%になります。つまり 仕入れ価格だけを原価と見たとき、上代どおりに売るかぎり掛け率がそのまま原価率になります。送料や梱包を原価に加えると、原価率は掛け率より高くなります。上代・下代・掛け率の読み方は上代・下代とはで解説しています。

注意したいのは、粗利率が「実際に売れた価格」で決まる点です。値引きして売れば販売価格が下がるため、当初見込んだ粗利率は実現しません。値付けの段階で見込む利益と、決算で確定する利益は別の数字だと考えてください。

計算そのものは表計算ソフトの1行で足ります。原価の列と目標粗利率の列を用意し、販売価格の列に「原価 ÷ (1 − 目標粗利率)」を入れておけば、商品が増えても同じ式で計算できます。

販売価格を決める4つの手順

手順は次の4段階です。順番を入れ替えると、あとから利益が消える原因になります。

手順1: 1点あたりの原価を確定する。 仕入れ価格だけを原価と考えると費用が漏れます。次の費目を1点あたりに換算して積み上げます。

費目 内容 1点あたりへの換算
仕入れ価格(下代) 商品そのものの代金 そのままの金額
仕入れの送料 発注1回ごとにかかる配送料 1回の発注点数で割る
梱包・発送資材 箱、緩衝材、伝票などの実費 1点あたりの実費
保管にかかる費用 倉庫や什器の費用 月額の費用を、その期間に売れる見込み点数で割る(目標利益の中で回収する方法もある)

決済手数料や、モール・カートの利用料は販売価格に比例するため、原価に足すのではなく、求めた販売価格から差し引いて手元に残る金額を確認します。購入者へ送る送料は、自社と購入者のどちらが負担するかで扱いが変わるため、送料が無料になる基準額とあわせて先に決めておきます。

手順2: 目標の粗利率を決める。 自店の家賃・人件費・広告費をまかない、事業として続けられる水準を置きます。

手順3: 販売価格を逆算する。 「原価 ÷ (1 − 目標粗利率)」で税抜の販売価格を求めます。

手順4: 端数を整え、値引きの余地を残す。 計算した金額をそのまま出すと中途半端な表示になるため、表示価格の形に整えます。同時に、セールやクーポン、送料無料の原資を最初の価格に含めます。ここを省くと、値引きした瞬間に赤字になります。

計算例 — 原価300円の商品を粗利率から逆算する

税抜300円で仕入れた商品を例に計算します。金額はすべて架空の計算例です。ここでの原価は、仕入れる側が支払った仕入れ価格(下代)を指します。卸す側が自社の製造原価から卸価格を組み立てる場合とは基準が違います。

まず、仕入れ価格だけを原価として、目標の粗利率ごとに販売価格を求めます。

目標粗利率 計算 販売価格(税抜) 粗利額
30% 300 ÷ 0.7 429円(小数点以下切り上げ) 129円
40% 300 ÷ 0.6 500円 200円
50% 300 ÷ 0.5 600円 300円
60% 300 ÷ 0.4 750円 450円
70% 300 ÷ 0.3 1,000円 700円

粗利率50%なら原価の2倍、60%なら2.5倍、70%なら約3.3倍が販売価格になります。「原価の何倍で売るか」という言い方は、この関係を倍率で言い換えたものです。

次に、実際の原価を積み上げます。1回の発注で20点を仕入れ、仕入れの送料が800円かかったとすると、1点あたりの送料は40円です。梱包資材が1点15円なら、1点あたりの原価は300円 + 40円 + 15円で355円になります。

同じ粗利率50%で計算し直すと、販売価格は355 ÷ 0.5 で710円です。仕入れ価格だけで計算した600円のままで売っていた場合、粗利率は(600 − 355)÷ 600 で約41%まで下がっていたことになります。送料と梱包を原価に入れるかどうかで、粗利率は約9ポイント動きます

最後に端数を整えます。消費者向けの価格表示は税込の総額表示が原則なので、税込で判断します。税抜710円は消費税10%で税込781円です。税込800円に整えるなら税抜は約727円となり、粗利率は(727 − 355)÷ 727 で約51%です。切り下げて税込780円にすると税抜は約709円で、粗利率は約50%になります。丸める方向によって粗利率が変わるため、調整後にもう一度計算し直してください。

よくある失敗 — 送料・税区分・上代の扱い

値付けでつまずく原因は、多くの場合この3つです。

仕入れの送料を原価に入れていない。 前節のとおり、1点あたりに換算した送料は粗利率を数ポイント動かします。単価の低い商品ほど影響は大きくなります。送料が無料になる基準額がある仕入れ先では、基準を満たす発注にまとめられるかどうかで原価が変わります。

税抜と税込が混ざっている。 仕入れの価格表は税抜で書かれることが多く、消費者向けの表示は税込が原則です。粗利率の計算は、原価も販売価格も税抜でそろえて行います。片方が税込のまま計算すると、粗利率は実態よりよく見えます。受け取った価格表が税抜か税込かは、最初に確認してください。

上代を「守らなければならない価格」と思い込んでいる。 上代(希望小売価格)は目安であり、書籍など再販売価格の維持が認められている一部の商品を除き、販売価格は販売する事業者が決められます。上代どおりに売る前提だけで判断すると、値引きが必要になった時点で計算が崩れます。逆に、最初から上代を大きく下回る価格を付けると、あとで下げる余地がなくなります。

業種・商品によって値付けの重心が変わる

同じ計算式を使っても、どこに重心を置くかは扱う商品で変わります。数値の目安は商品や取引条件によって幅があるため、考え方の違いだけを整理します。

orosy のバイヤーポータルでできること

orosy のバイヤーポータルは、複数の仕入れ先・約20万点の商品を、1つの画面と1つのカートから検索し、発注から請求書までを完結できるサービスです。審査の承認後は卸価格つきのカタログが開き、商品ごとの販売単位や、配送グループごとの最低注文金額も画面上で確認できます。値付けの前提になる仕入れ価格と発注条件を同じ画面で確認できるため、1点あたりの原価を計算しやすくなります。

登録・利用は無料で、かかるのは商品代金と送料だけです。初期費用も月額もなく、クレジットカードの登録なしで始められます。事業者向けのサービスのため審査制ですが、審査を待つ間もテストモードで検索から発注までの流れを試せます(取引先に通知されず、発送も課金もされません)。登録には、事業者サイトの URL の入力が必要です。

商品のお届け先は、店舗・倉庫・事務所といった事業者の拠点です。購入者への直接の発送には対応していないため、購入者へ送る作業と、その送料の扱いは自社の値付けに含めて計算してください。欠品があった場合は、実際に届いた分にだけ請求が発生します。

よくある質問

販売価格の決め方の基本を教えてください。

原価・競合の価格・顧客にとっての価値の3つを見比べ、最後に自店の目標粗利率で決めます。計算式は「販売価格 = 原価 ÷ (1 − 目標粗利率)」の1本です。原価には仕入れ価格だけでなく、仕入れの送料や梱包の費用まで含めます。求めた金額を端数の形に整え、値引きの余地を残して確定します。

原価300円のものを売った場合いくらで売れますか。

目標とする粗利率によって変わります。計算式は「販売価格 = 原価 ÷ (1 − 目標粗利率)」で、原価300円(税抜)なら、粗利率40%で500円、50%で600円、60%で750円です。仕入れの送料や梱包の費用を1点あたりに換算して原価に加えると、必要な販売価格はこれより上がります。

仕入れの何パーセントが原価ですか。

決まった割合はありません。仕入れた商品の原価は、支払った仕入れ価格(下代)が土台になります。販売価格に対して原価が何%かは、仕入れ時の掛け率と、その商品をいくらで売るかで決まります。上代1,000円の商品を6掛け(600円)で仕入れて上代どおりに売れば、販売価格に対する原価率は60%です(仕入れ価格だけを原価とした場合)。

原価の何パーセントで売れば良いですか。

一律の割合はなく、目標の粗利率から逆算します。「販売価格 = 原価 ÷ (1 − 目標粗利率)」で計算すると、粗利率50%なら原価の2倍、60%なら2.5倍、70%なら約3.3倍が販売価格になります。倍率を先に決めるのではなく、その価格で売れるか、手元にいくら残るかを確認して決めてください。

卸価格の計算方法は何ですか。

卸価格(下代)は「上代 × 掛け率」で求めます。上代1,000円の商品を6掛けで取引するなら、卸価格は600円です。仕入れる側から見れば、この卸価格が支払う仕入れ価格になります。卸す側がどのように卸価格を組み立てているかは、卸価格と掛け率の決め方で解説しています。

上代(希望小売価格)どおりに売らなければいけませんか。

書籍など再販売価格の維持が認められている一部の商品を除き、販売価格は販売する事業者が決められます。上代は卸取引の書類に記載される目安であり、拘束力はありません。ただし上代を大きく下回る価格を続けると値引きの余地がなくなるため、値付けの起点として使うのが実務的です。

990円のような端数の価格にしたほうがよいですか。

商品と客層によって向き不向きがあるため、一律に有利とは言えません。計算で求めた金額をそのまま出すと中途半端な表示になりやすいため、端数をそろえる調整は行います。丸めるときは切り上げか切り下げかで粗利率が変わるので、調整後の粗利率を必ず計算し直してください。


販売価格の決め方は、原価を漏れなく積み上げ、目標の粗利率から逆算し、端数と値引きの余地を整えるという順序で進めます。倍率や割合の目安を先に決めるのではなく、自店の数字を式に入れて確認することが、売れているのに手元に残らない状態を避ける近道です。

値付けの前提になる上代・下代・掛け率の読み方は上代・下代とは、卸す側から見た価格の組み立て方は卸価格と掛け率の決め方で解説しています。仕入れそのものの進め方は小売店・EC の仕入れ完全ガイド、オンラインで販売する場合の準備はネットショップ開業の仕入れをあわせてご覧ください。

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